夏時期のトラウトは捕食行動は旺盛。表層付近でバイトし、水しぶきをたててジャンプし躍動感あふれる魚とのやりとりが楽しめる時期です。しかし一方でトラウトは強い日射でおこる水温上昇を苦手とします。このページでは暑い夏にトラウトが好む場所や条件を主に4つのポイントに注目して解説していきます。
管理釣り場 真夏でも釣れる条件は?
条件1:水温、水量、溶存酸素量(DO)
まず夏のトラウトフィッシングで一番大切なのは水温です。もともと寒冷地域に棲んでいた魚なのでどちらかというと冷たい水には強い魚ですが、環境水温が上昇すると弱ってしまいます。夏場の日中は水面は太陽に照らされて水温は急上昇します。太陽をさえぎらない低地の平野部のひらけたポンドタイプの釣り場はこの時期は向いていないという事になります。
どちらかというと
①流入水量が多く、温まった水が一か所に留まらない、
②高緯度または山間高地で涼しい場所、
③木々が生い茂り、日射があまり水面にあたらない場所、
などがこの時期の釣り場に向いています。
水量が豊富なら低地平野でも可能
しかしこの時期、低地の平野部でも営業している釣り場もあります。それはどんな釣り場かというと水量を多く抱えている釣り場です。流入する水量が豊富で、温まった水をどんどん排水することができる釣り場なら水温は上がりにくくなります。水量豊富な釣り場であれば夏場でも比較的釣りに適しているといえます。
トラウト類の活動水温の目安
(下表はニジマスのデータです。魚種によって若干差はあります)
~04℃:底で動かない(ボトムフィッシング)
05~09℃:11時頃水温があがる頃の方が釣り易い
10~16℃:理想の適水温
17~18℃:魚の追いがやや悪くなるがルアーフライの釣りが成立する水温
19~20℃:明け方か夕方の頃が釣り易い
20~23℃:活性が落ちてくる(釣りは厳しい)
24℃~ :徐々に弱って死んでしまう
ルアーフィッシングやフライフィッシングなど、トラウト(ニジマス)の疑似餌を追わせる釣りの場合、水温18℃以下が一般的に楽しめる目安です。それを超えてくると魚が疑似餌を追う距離が短くなりだすので釣り方を工夫するなど難易度が高くなってきます。
夏場は溶存酸素量に注意
夏のトラウトフィッシングは水の飽和溶存酸素量(DO)も大きなポイントの一つです。一般的に水は水温が低いほど溶存酸素量が増えることで知られています。冬から春にかけて大量放流で良く釣れていた池でも、夏場は不調になってしまう事もあります。
夏は酸素量と魚の数のバランスが重要
管理釣り場は魚の数と酸素量のバランスも重要です。魚の密度が濃い釣り場(濃すぎる釣り場)はそれだけ酸素量が必要となりますので、水温が上がりやすい夏場は池が酸欠に陥り易くなります。魚が酸欠状態だとルアーやフライを追う距離が短くなる傾向があるので真夏は魚が多すぎる釣り場の釣行は注意が必要です。
一方で夏場はプランクトンが増え、光合成により水中の酸素量が多すぎる(過飽和)状態になる事もあります。水中の酸素量が多すぎると魚のガス病、寄生虫の発生リスクが増大する他、また酸素量が多すぎても魚の追いが悪くなるという事例も報告もされています。
トラウト系管理釣り場のDOの目安
03.0~04.9mg/L 酸欠気味
05.0~06.9mg/L 酸欠に注意
07.0~09.9mg/L 釣場としてバランスの良い状態
10.0mg/L~ 過飽和に注意
酸素量を管理する釣り場の工夫
滝、水車、エアレーションといった設備などで池の溶存酸素量を安定化することができます。こういった酸素を水中に取り込む工夫がある釣り場も、釣り場選びの参考にしてみてはいかがでしょう。水の入れ替わりが頻繁に行われる池は魚にとって好条件ということは言うまでもありません。
条件2:時間帯
次に時間帯です。真夏に関しては釣り場の放流があれば別ですが、一般的に日射の強い日中はあまり釣果は期待できないことが多いです。やはり日の出、日没前後が魚の捕食時間となりますので、この時間帯が入っている釣り券を購入する事をオススメします。釣り場によってはナイター営業を行っている所もあるのでそういった所を選ぶのも良いでしょう。場所によって差は当然ありますのであくまでも参考までに。ナイターにチャレンジされる方は手元、足元を照らすライトなどあると便利です。(釣りをしている間は消灯またはポンドを照らさないようにしましょう)
キャンプ場付きの施設で早朝やナイタープランも?
またこの時期はキャンプも行きやすい時期です。キャンプ場併設で泊りがけでの釣行ならば夕暮れから釣りにチャレンジして、また朝日が昇る前に釣りにチャレンジできるところもあります。営業時間を守りつつ楽しみましょう。
時間帯別
04~09時:比較的向いている
09~12時:日射の強い時間はあまり良くない場合が多い
12~17時:日射の強い時間はあまり良くない場合が多い
17時~日没:比較的向いている
日陰が多い釣場
夏場の晴れた日は照り返しもあり、1日中外に立っているのは厳しい日もあります。山深い場所や林に覆われて日陰が多く、木陰で休みながら釣りを楽しむ事が出来ます。また夏場の日陰は水温上昇を抑えられるので人にも魚にもやさしい釣り場の条件になります。
条件3:魚種
<条件1>と被りますが、管理釣り場の放流魚の中ではニジマス(レインボートラウト)は適正水温が広めの魚です。ニジマスを多く入れている釣り場が良いでしょう。
条件4:夏のトラウトフィッシングのレンジ
夏のトラウトは捕食欲求は旺盛なものの、暑さを嫌がります。そこを踏まえてどんなレンジ(タナ)が良いか解説します。
表層(水面~30cm程度)
夏のトラウトは表層付近の浮遊物や落下物にアタックを仕掛けるシーンをよく見ます。しかしなぜ水温が高い表層付近にわざわざ来るのでしょうか?そうです!求餌に積極的で食欲旺盛なトラウトがいるのがこのレンジです。
シルエットは魚が口に含みやすい小さいもの。スプーンであれば0.4g~0.9g、クランク、ミノーは小さめ、または細めなもの。フライであれば子虫を模したミッジ系などが良いでしょう。
中層
夏の中層域は特に冷たく居心地がいいわけでもなく、エサが豊富というわけでもなく。トラウトにとって魅力がない特徴のないレンジです。
ボトム・底(底~底上20cm程度)
夏の池の中で比較的水温が低いのが底付近です(水の比重参照)。この時期居心地よい涼しい場所を選ぶのは人もトラウトもかわりません。しかしこのレンジの魚は食欲のスイッチが入ってない魚も多いので、クチを使わせるのは一工夫が必要かもしれません。
夏の管理釣り場運営の工夫の一例
上記の通り「真夏のエリアトラウト」は条件が整った場所でないと営業が難しい。という点を踏まえたうえで今度は多少条件が見合わなくても釣り場運営者の工夫で営業している釣り場を紹介します。釣り場はどういった点を工夫し、釣り場が釣り易い状況になるよう努力しているか?を探っていきたいと思います。
池の溶存酸素量管理
夏の釣り場は水温上昇による酸欠を注意する一方で、植物プランクトンが増える事で光合成による酸素過飽和にも注意が必要になります。池の酸素量が少ないと魚の追いが悪くなり、また池の酸素量が多すぎても魚のガス病・寄生虫などの発症リスクが上昇するうえ、酸素量が多すぎてもやはり魚の追いが悪くなるとの報告もあります。水車攪拌や曝気などで水を空気にさらす事で、溶存酸素量(DO)を一定値に保つ有効な方法です。
水車攪拌は酸欠・過飽和どちらも緩和、安定化させる
水車による攪拌は酸欠状態の池に酸素を含ませ、酸素過飽和状態の池からは酸素を飛ばす効果があります。水を空気に晒す事で池の溶存酸素量を安定化させる事が出来る設備です。
水車以外でも噴水や曝気装置(リプル)、また滝(高所から水を落とす事による飛沫)なども同様の効果があります。
夏場は敢えて池を濁らせる
敢えて池をに濁らせる事で水棲プランクトンの光合成を鈍らせる事で、水中溶存酸素が過飽和にならないように工夫する釣り場もあります。これは元々酸素量が多い池で行われています。
夏場の疑似換水強化
井戸のポンプアップ量は通年でそうそう変える事はできません。そこで夏場は管理する池の数を減らしたり、また水深を低下させるなど工夫して管理する池の水の量を減らす事で疑似的に換水の強化をはかる釣り場もあります。
夏は管理する池の数を減らす
複数池がある釣り場で行われる手法。夏場は管理池の数を減らし、水の流入量を集中させる事で水の回転を良くしている釣り場もあります。また小型池のみに絞って運営する釣り場もあります。
夏は管理する池の数を減らす管理釣り場

夏は水深を低くして営業
管理池の水深を下げ池の管理水量を減らし、流入する水の比率を高める事で水の換水を良くしている釣り場もあります。
夏は水深を低くする管理釣り場

暑さに強いニジマスの開発
昨今日本の夏の高温時期が長期化しています。それに伴い高水温に強いニジマスの開発が行われています。高水温で孵化した個体をかけあわせて選抜育成や給餌のミネラル配合を工夫している養魚場もあります。
夏は他の魚種を放流
水温条件等でトラウト類の放流が出来ない管理釣り場は暑さに強い魚(例えばナマズ、ブラックバス、コロソマなど)を放流しているところもあります。
夏にトラウト類以外の魚を放流している管理釣り場

まとめ
夏のエリアトラウトフィッシングは
① ルアー・フライの場合、理想は水温18℃までを目安。日中の暑い時間帯でも表層水温21℃程度まで。
② 水の入れ換わりが良い釣り場を選ぶ。水が動いている所、酸素を取り入れている場所(インレット、噴水、エアレーション、水車まわり、アウトレット)付近が良い
③ 釣りの時間帯を工夫する(日陰など条件が整っていれば日中でも可)
④ レンジは表層付近か、もしくは一番底。
魚のいる場所が偏りやすいので場所ムラ、タナムラが大きい時期。なにかしらか魚が居つく場所を平準化している工夫をしている釣り場を選ぶのが良いでしょう。夏のトラウトフィッシングはトラウトの居心地の良い場所(ポイント)を探して釣りをするのが釣果に辿りつく一番の近道。夏のトラウトフィッシングは場所が見つかれば釣果は上がるが、ハズすと全く釣れない。魚のいる場所の偏りが非常に大きい時期です。
ひと昔前までは管理釣り場は渓流釣りが禁漁となる期間を補完するための釣り、つまり管理釣り場は10月~翌春期間の「冬の釣り」の代名詞でした。夏場に営業している釣り場は、渓流+キャンプ場の釣り場かニジマスエサ釣堀に限定されていました。しかし近年エリアトラウト熱の高まりを受けて条件の良い釣り場を中心に、井戸水確保などで通年で楽しめるコンテンツへと転換してきました。
夏休み時期のルアー&フライはフィールドの釣りでも高地の渓流や湖沼、あるいは東北・北海道などの地域がベストシーズンになります。この時期一般のポンドタイプの管理釣り場はCLOSEする事が多いですが、上記のように条件が整っていさえいれば、魚自体は秋の繁殖時期にむけ鋭気を養う時期でトラウトの喰い自体は良い時期です。エリアトラウトにこだわるならば「水温」と「酸素量」の良さそうな場所を選んでお出かけしてみて下さい。
こちらもご覧ください
